EC・実店舗連動で顧客体験を最大化する販促戦略と問屋活用術

オムニチャネル時代における販促の重要性

スマートフォン普及率が88.6%に達し、SNS利用率も78.7%と高まる中、消費者の購買行動は大きく変化しています。ECでも店舗でも購入するハイブリッド顧客が20-69歳で約52.3%に達し、日用品EC売上の81.8%を占める主力層となっています。しかし、日用品のEC化率はまだ10%未満に留まり、90%以上が実店舗取引という現実もあります。

この状況下で求められるのは、ECと実店舗を対立軸で捉えるのではなく、両者を連動させて顧客体験を最大化する販促戦略です。本記事では、成功企業の具体的事例と、問屋が提供できる独自の価値提案を通じて、小売店が実践すべき施策を明らかにします。

ハイブリッド顧客が抱える不満と機会

ECと店舗の購買データから見える課題

ハイブリッド顧客は高い購買力を持つ一方で、「在庫情報やポイント連携の不足」「EC・店舗間の価格差」に不満を抱えています。サブスク・定期購入利用者の約78%が月1回以上店頭購入も継続しており、利用者の客単価は非利用者より平均23%高いというデータもあります。

この層は「まとめ買い志向」が強く、PR調査では76.0%が通常の買い物でまとめ買いをすると回答。さらに40.8%がポイントやキャッシュレスキャンペーンを重視しており、お得情報への感度が高い傾向にあります。

チャネル間の一貫性が生む顧客ロイヤルティ

顧客が求めているのは、どのチャネルでも同等の体験が得られる環境です。店舗で見た商品をECで詳しく調べ、レビューを確認してから購入する。あるいはECで見つけた商品を店舗で実際に手に取って確認する。こうした行動パターンに対応するには、チャネル間での情報連携とポイント統合が不可欠です。

成功企業に学ぶO2O戦略の実践例

ユニクロ:アプリを軸にした相互送客

ユニクロは公式アプリで店舗購入時に次回以降使えるクーポンを発行し、アプリ内で店舗在庫や商品レビューを確認できる仕組みを構築しました。店頭では公式アプリやLINEの登録を案内し、オンラインとオフラインの相互送客を強化しています。

この施策により、店舗来店者をデジタル顧客として囲い込むと同時に、オンライン利用者に店舗体験を提供する循環を生み出しています。

無印良品:購入以外の行動でポイント付与

無印良品は会員制度を刷新し、「欲しいものリスト登録」「レビュー投稿」「店頭チェックイン」など多様な行動でポイント付与を開始しました。購入以外でもポイントが貯まることで、ECサイト訪問を促し、実店舗来店につなげています。

顧客との接点を増やすことで、ブランドへのエンゲージメントを高める戦略といえます。

スターバックス:モバイルオーダーで待ち時間解消

スターバックスはモバイルオーダー&ペイ(O2O)でアプリ注文後に店頭で受け取る方式を導入しました。顧客は待ち時間なく商品を受け取り、店舗では列の解消とセット販売の機会を得ています。

オペレーション効率化と顧客利便性向上を同時に実現する好例です。

ココカラファイン:医薬品EC×店舗受取の融合

ドラッグストアのココカラファインは、店頭販売が難しい第1類医薬品も、ECサイト上で薬剤師相談の上購入・決済でき、店舗で注文番号を提示すれば受け取り可能としました。さらに店内にAmazon Hub設置店舗を増やすなど、EC配送連携にも取り組んでいます。

規制のある商品カテゴリーでも、オムニチャネルの利点を活かした顧客体験を提供しています。

ワークマン:配送コスト削減と店頭受取徹底

ワークマンは配送コスト削減のため店頭受取を徹底し、将来的に配送を廃止する方針としています。O2Oモデルで効率化を図りつつ、店舗への来店機会を創出しています。

小売店が直面する課題と問屋の役割

在庫リスクと価格競争の板挟み

小規模店舗では、自社開発商品の初期投資や大量発注による在庫リスクが大きな負担となります。一方で仕入商品は他社との品揃え重複で差別化しづらく、利益率が低下しやすい状況にあります。大手ECモールやドラッグストアチェーンとの価格競争に巻き込まれる恐れもあります。

販促リソース不足という現実

専任マーケティング担当が不足し、独自キャンペーン企画やデジタル広告運用が難しい小規模店舗は、メーカー主導のプロモーションに依存しがちです。実店舗とECを同時運営する場合、在庫管理や物流コストが膨らみ、人手不足の影響を受けやすくなります。

問屋が提供できる5つの価値

こうした課題に対して、問屋が提供できる価値は以下の5点に集約されます。

1. データ連携・仕入精度向上 多数のメーカー・商材情報を持つ問屋は、POSデータや市場トレンドを活用し、需要予測・品揃えの最適化提案が可能です。アピデ社など一部問屋は先進的なITシステムで得意先の在庫管理・顧客分析を支援しています。

2. 迅速な物流対応 多くの問屋は自社物流センターを持ち、在庫商品の即日出荷体制を構築しています。必要な商品を素早く店舗へ届けることで欠品リスクを低減します。

3. 販促資材提供 メーカー提案の販促POP資料やサンプルセットを問屋経由で提供し、店舗の販促負担を軽減します。印刷可能なPOPデータや、什器付きの展示パッケージを同梱して供給するサービスも広がっています。これにより、店舗は商品を仕入れるだけで即座に展開提案できるようになります。

4. セット・陳列提案 関連商品を組み合わせたセット提案や什器セットで、新しい売場づくりを支援します。例えば雑貨問屋では、シリーズごとの什器付きパッケージを用意し、製品・テスター・什器がセットになった提案で売場作りを効率化しています。

5. 独自商材・企画提案 他社未提供の商品や限定品など、差別化できる独自商材を提案します。またお中元・お歳暮など季節商戦に向けたカタログ・チラシ企画や、ポイントキャンペーンなどの販促企画も問屋主導で行われます。これにより小売店は単なる商品供給元以上のビジネスパートナーとして活用できます。

バイヤーが仕入れを決める4つの差別化ポイント

独自販促支援によるブランド力向上

一般的な販促に加え、問屋独自のキャンペーン(マストバイ型企画やO2O連動企画など)を提供できる点が強みです。競合店では企画できない「レシート撮影応募」「デジタル決済連動クーポン」などの先端販促を導入することで、顧客への訴求力を高めます。

他にない商品提案で価格競争を回避

アピデ社のように「他にない商品」を揃える問屋は、先取り商材や差別化商品で得意先の売場活性化を支援します。価格競争を避けるためにも、機能やデザインでユニークな商品群が重要です。

季節商戦を見越した先取り仕入れ

花粉シーズン、年末大掃除、夏の猛暑対策など、季節商戦を見越した早期仕入れ提案が可能です。市場動向をいち早く共有し、最適なタイミングで商材を確保できることが競合との差別化となります。

ワンストップ支援でリソース不足を解消

問屋は単なる卸売りに留まらず、「繁盛サポートNo.1」を掲げるアピデのようにITツールや販促ツールを提供します。顧客データ分析やCRM、販促企画をワンストップで提案する体制は、特にリソースの限られた中小小売店にとって大きなメリットです。

実店舗とECで異なる商品の見せ方とセット提案

実店舗でのPOP・什器活用とQRコード連携

店頭ではPOPや販促什器で商品の特長を端的に訴求します。パッケージを手に取って確認できるメリットを活かし、用途や機能をわかりやすく伝えるキャッチコピーやイラストを配置します。関連商品は近くにまとめて陳列し「まとめ買い」需要を喚起します。

QRコードをPOPに印刷してECレビューに誘導したり、共通ポイントをアピールしたりする連携施策も効果的です。店舗での体験をデジタルへ繋ぐ工夫が、ハイブリッド顧客の満足度を高めます。

ECサイトでの視覚的訴求と信頼構築

ECサイトの商品ページでは高品質な画像を6~8枚以上用い、全角度から見せることが重要です。ファーストビューではメリットを端的に示すキャッチコピーとベネフィットリストを箇条書きにしてユーザーを惹きつけます。

セール情報や送料無料などの訴求ポイントも目立つ場所に配置し、購入ボタンを分かりやすくデザインします。顧客レビューやQ&Aを効果的に活用し、信頼性と選択理由を補強します。

チャネル横断のセット提案で客単価向上

ECでは「関連商品セット」や「おまとめ買い割引」を画面上で表示し、客単価向上を図ります。実店舗では複数購入でお得になるパッケージ商品や、キャンペーン用の詰め合わせ什器を用意して陳列します。

例えば花粉対策セット(マスク+目薬+スプレー)や大掃除セット(洗剤+スポンジ+ブラシ)など、ユーザーの手間を減らす提案で購買を促します。

季節性を活かした仕入れ・販促戦略

季節ごとの需要変動に対応する

季節ごとの需要を見据えた仕入れ・販促計画が重要です。True Dataの購買分析では、夏の猛暑時には冷却用品やUVケアが急増し、年末年始には大掃除関連商品の売上が著しく伸びています。

シーズン 主な需要品目 市場データ
春(花粉期) マスク、花粉用メガネ、鼻用スプレー、花粉対策洗剤 花粉対策市場は約1000億円規模
夏(6~8月) 冷却シート、UVケア商品、制汗剤、スポーツ飲料 6月はドラッグストアで冷却用品+28.2%、制汗剤+26.3%
冬(年末) パイプ・風呂釜クリーナー、住居用洗剤、加湿器、栄養ドリンク 12月はドラッグストアで掃除用品が前年比大幅増

先行発注とセット展開で機会損失を防ぐ

花粉シーズン前には対策品を揃え、年末には大掃除用品の特設コーナーを設けるなど、季節感のある売場作りと販促で機会損失を防ぎます。問屋との連携により、トレンドを先取りした商材確保と効率的な売場展開が可能になります。

消費者の顕在・潜在ニーズを捉える

衛生・予防意識の継続的需要

感染症対策意識の高まりで、マスクや手指消毒剤、除菌クリーナーなど衛生商材へのニーズが継続しています。家事負担を減らす簡便な掃除・洗濯用品(除菌機能付き洗剤や使い捨て雑巾など)にも注目が集まります。

備蓄ニーズとローリングストック志向

災害や感染症への備えから、家庭でのローリングストック(常備保存)志向が強まっています。クロス・マーケティング調査によれば、家庭備蓄率で「ティッシュ/トイレットペーパー」が49%で最多、次いで水、住居用洗剤、即席・レトルト食品が高い比率となっています。

シャンプーや手洗い石鹸も日常消費品としてストックする傾向にあり、まとめ買い需要を喚起する提案が有効です。

時短・利便性と健康志向の高まり

共働き世帯などでは時短ニーズが顕著で、切らさず自動配送されるサブスク(定期便)や、すぐに使える使い切りパックの需要が増加しています。体組成計や電動歯ブラシ、高性能ドライヤーなどの健康・美容家電への買い替えも増えており、新商品の性能アップや機能性向上が購買動機となっています。

まとめ:オムニチャネル時代の勝ち筋

スマホ普及率88.6%、SNS利用率78.7%という環境下で、ハイブリッド顧客は日用品EC売上の81.8%を占める主力層となりました。しかし日用品のEC化率は10%未満に留まり、実店舗の重要性は依然として高い状況です。

この状況で求められるのは、ECと実店舗を連動させた一貫性のある顧客体験です。ユニクロ、無印良品、スターバックス、ココカラファインなどの成功事例が示すように、アプリ活用、ポイント統合、モバイルオーダー、店舗受取といったO2O施策が効果を発揮しています。

小売店にとって問屋は、データ連携、迅速な物流、販促資材提供、セット提案、独自商材企画といった多面的な価値を提供するビジネスパートナーです。独自販促支援、差別化商品、季節の先取り仕入れ、ワンストップ支援という4つの差別化ポイントを活かすことで、価格競争を回避し、顧客ロイヤルティを高めることが可能になります。

実店舗ではPOP・什器とQRコード連携、ECでは視覚的訴求とレビュー活用、そして両チャネルでのセット提案により、まとめ買い志向の強い顧客の購買を促進できます。季節性を捉えた仕入れ・販促戦略と、衛生・備蓄・時短・健康といった消費者ニーズへの対応が、今後の成長を左右するでしょう。

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