温浴施設の売店を強化したいと思っても、「結局、何を仕入れればいいのか」で止まってしまう施設は少なくありません。商品数を増やせばよいわけではなく、最初から幅広く仕入れると在庫管理や売場づくりが複雑になります。初期段階で重要なのは、施設での体験と結びつき、スタッフが説明しやすく、お客様が購入理由を理解しやすい商品に絞ることです。本記事では、初めて物販を強化する温浴施設・スーパー銭湯向けに、最初に持つべき商品と具体的なスターターSKU、店頭・ECでの売り方まで整理します。
温浴施設の物販は「商品数を増やすこと」から始めない
物販を強化するとき、最初に考えがちなのが「売店の商品を増やそう」という発想です。しかし、初めて物販を見直す施設ほど、商品数を増やす前に何のための売場なのかを決める必要があります。
たとえば現在の売店が、飲料・お菓子・地域のお土産・タオル・下着・日用品といった構成だとします。必要な商品は揃っていますが、「この施設だから買いたくなる商品」が見えにくい状態です。
温浴施設ならではの物販を考えるなら、入浴中→サウナ→入浴後→自宅でも使う→誰かに贈る、というお客様の行動から逆算して商品を考えた方が、売場全体の方向性を決めやすくなります。
実際、おふろcaféを展開する温泉道場(ONDOホールディングス)は、2025年7月26日の「ふろの日」に埼玉・神奈川の4店舗でオリジナル手ぬぐいの販売を開始しました。乾きやすく肌ざわりのやさしい生地で2色展開、価格は1,280円。おふろやサウナでの使用はもちろん、日常の暮らしにもなじむ一枚として案内されています。単に「必要だから置く」のではなく、施設で過ごした時間を思い出せる商品として設計している点が参考になります。
初めて温浴施設の物販を強化するときの商品選び5条件
最初の商品は、「人気がありそう」という理由だけで選ばないことが重要です。初期導入では、次の5つを基準に考えると整理しやすくなります。
1. 利用シーンがすぐ分かる
タオルなら「お風呂上がりに使う」を説明する必要がほとんどありません。温浴との関連が薄い一般雑貨は、なぜここで売っているのかをPOPやスタッフが説明する必要が出てきます。まずは施設体験との距離が近い商品を優先します。
2. スタッフが短い言葉で説明できる
温浴施設のスタッフは雑貨販売の専門販売員ではありません。「サウナを利用される方におすすめです」程度の説明で魅力が伝わる商品が向いています。
3. サイズ・種類を増やしすぎなくてよい
サイズ違い・色違い・香り違いが多い商品はSKU数と在庫管理を一気に増やします。フリーサイズ・定番色中心・用途が明確な商品に絞ると、売れ方を検証しやすくなります。
4. 持ち帰りやすい
お客様は入浴後にそのまま帰宅します。大きい・重い・壊れやすい商品よりも、タオルやサウナハットなど持ち帰りやすい商品から始める方が売場をつくりやすくなります。
5. 単品からセットへ広げられる
タオル+サウナ用品+小型雑貨があれば、後から「サウナセット」「ギフトセット」へ展開できます。最初のSKUが次の商品企画につながるかまで考えて選びます。
温浴施設で最初に持つべき3つの商品カテゴリー
初めて雑貨物販を強化する場合、まず検討したいのが、タオル・サウナ関連商品・入浴後や自宅用の生活雑貨の3カテゴリーです。
1. タオル|最初の入口商品にしやすい
温浴施設と利用シーンが直結しており、用途が分かりやすいため最初に検討したい商品です。ただし「タオルを売っているから対応できている」と考えないことも重要です。フェイスタオルを忘れ物対応として販売しているだけなら、物販としては別の可能性があります。施設利用用と、自宅に持ち帰りたくなるタオルを分けると、肌ざわり・吸水性・ギフト適性など選ぶ理由をつくれます。
実例として、温泉道場は中川政七商店とコラボし、各地の織りや染めの技法を用いたご当地手ぬぐい「木綿湯布」を展開しています。豆腐のパッケージを模した見た目で、濡れたタオルを持ち運ぶ容器としても使え、数量限定でギフト需要にもつなげています。商品そのものだけでなく、地域性やパッケージまで含めて「持ち帰りたくなる理由」を設計している点が、タオルを入口商品にする際のヒントになります。
2. サウナ関連商品|用途別の売場をつくりやすい
サウナを併設している施設なら、次はサウナハット、サウナ向けタオル、サウナ用ポーチなどです。ポイントは、各カテゴリーに分散させず「サウナをもっと楽しむ」という一つのコーナーにまとめること。おふろcaféは公式サイトでサウナハットの必要性や選び方を紹介するコンテンツも公開しており、商品を置くだけでなく使い方まで伝えることとの相性も良いカテゴリーです。
3. 入浴後・自宅用雑貨|「体験の持ち帰り」をつくる
3つ目は、入浴後や自宅で使う生活雑貨です。ボディケア関連商品、バス雑貨、タオルと組み合わせられる小型雑貨などが候補になります。選ぶ基準は「今日の心地よさを自宅でも続けるための商品か」。これが、温浴施設ならではの売場のストーリーになります。
最初のスターターSKUは5商品程度から考える
一例として、初期導入を5SKU程度に絞るなら次のような構成が考えられます。
SKU1:自宅用フェイスタオル
施設内での使用ではなく、「自宅のお風呂上がりに使いたいタオル」として見せ、「その心地よさを自宅でも」という使い方まで伝えます。
SKU2:サウナ向けタオル
一般的なフェイスタオルとは別に用意し、「サウナ用品」という売場をつくる入口にします。
SKU3:サウナハット
タオルだけでは売場が平面的になりやすいため、形状の異なるサウナハットを加えます。「サウナをよく利用される方にはこちらもあります」と説明しやすい商品です。
SKU4:入浴後に使える小型雑貨
ファミリー層とサウナ目的の客層では好まれる商品が異なるため、ボディケアやリラックス雑貨など施設の客層に合わせて選びます。
SKU5:タオル+雑貨の小型ギフト
単品ではなくセット商品にし、「自分用」だけだった売場に「誰かに贈る」という購入理由を追加します。おふろcafé ハレニワの湯では、地域にちなんだ限定デザインのサウナハットをアパレルブランドとのコラボで施設限定販売しており、「その施設でしか買えない一品」がギフトや来館の記念として選ばれています。商品と施設の個性を組み合わせるのも、温浴施設ならではの展開方法です。
バスタオルや高単価商品は2段階目でもよい
バスタオルや高単価な生活雑貨を扱ってはいけないわけではありません。ただし初期導入では、売場面積や在庫金額とのバランスも考える必要があります。バスタオルはフェイスタオルより場所を取り、高単価の商品は購入までに説明が必要になることもあります。フェイスタオル→サウナ商品→小型雑貨→セット商品→反応を見て大型・高単価商品、という順番で広げる方が、何が受け入れられているかを確認しやすくなります。
温浴施設の店頭では「商品別」より「使う場面別」に売る
商品を選んだら、次は売場です。同じ5商品でも置き方で意味が変わります。タオル・サウナハット・バス雑貨と商品カテゴリーで分けるのではなく、「サウナをもっと楽しむ」「お風呂上がりをもっと心地よく」「温泉・サウナ好きへのギフト」と用途で分けます。これなら、商品知識がなくても「自分に関係のある売場」だと判断できます。
POPでは「高吸水フェイスタオル」だけで終わらせず、「お風呂上がりのタオルを見直したい方へ」「サウナ後に使いやすい一枚」など、購入する理由を先に伝えます。接客も、「サウナをご利用される方にはこちらもおすすめです」という短い説明で十分です。全員に商品スペックを覚えてもらうより、「誰に提案する商品なのか」を共有した方が運用しやすくなります。
設置場所も、売店だけでなくフロント付近・レジ横・サウナ入口周辺・脱衣所から退館までの導線・休憩スペース周辺などが候補になります。利用行動の流れの中に接点をつくることで、レジ横に少量置くだけでは気づかれにくかった商品にも目が向きやすくなります。
ECでは店頭の5SKUからセット商品をつくる
施設にECがある場合も、最初からオンライン専用商品を大量につくる必要はありません。まず店頭の商品を組み合わせ、「おうち温泉セット」「サウナスターターセット」のように2〜3種類のセットをつくります。POPにQRコードを掲載してECへ誘導すれば、施設で商品を知る→その日は購入しない→帰宅後にECで購入する、という選択肢も生まれます。店頭で購入した商品をECでも扱えば、施設体験→店頭購入→自宅利用→再購入という接点へ広げられます。
最初の物販で確認すべきなのは「売上」だけではない
テスト導入後は、売れた数量だけで判断しないことも重要です。どの商品が手に取られたか、自分用とギフトのどちらが多かったか、スタッフが説明しやすかったか、セット販売の反応があったか、といった点を確認します。サウナハットの反応が薄くタオルへの反応が良ければ、次回はタオルの種類を増やすといった判断ができます。ギフトセットが動くなら、母の日・父の日・敬老の日・年末年始などへ展開できます。最初の5SKUは売上を最大化するための商品ではなく、次の商品構成を決めるためのテストでもあると考えると、物販を改善しやすくなります。
まとめ|最初に持つべき商品は「施設体験とつながるもの」
初めて温浴施設の物販を強化するなら、商品数を増やすことよりも、施設体験との関連性が高い商品に絞ることが重要です。まずはタオル・サウナ関連商品・入浴後や自宅用雑貨の3カテゴリーから考え、フェイスタオル・サウナ向けタオル・サウナハット・小型雑貨・小型ギフトといったスターターSKUで反応を見る方法があります。そのうえで、「施設で使う」から「自宅でも使う」へ、「自分で使う」から「誰かに贈る」へと商品構成を広げていきます。
最初から完成した売店をつくる必要はありません。まずは現在の売店商品を、「施設内で使う商品」「自宅でも使える商品」「ギフトにできる商品」の3つに分類してみることから始めてみてください。
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