小売店の売上を左右する「店頭販促」と「売場づくり」の戦略的アプローチ

はじめに:デジタル時代における店頭販促の重要性

デジタル化が進む現代においても、実店舗での購買体験は依然として重要な役割を果たしています。店舗では顧客が商品を直接手に取り、視覚・触覚・感情を刺激できるため、購買意思決定への影響力が大きいのです。

新型コロナ禍が落ち着き外出機会が戻る中、消費者はECの手軽さを享受しつつも、店頭での「買い回りの楽しさ」を求めています。調査によれば、約3割の消費者が「地域社会を救うために地元で買い物をする」と回答しており、地元中小店の価値が再認識されています。

実店舗販促はブランド認知や差別化にも寄与し、顧客との直接的コミュニケーションを通じてニーズ把握にもつながります。オンラインでは得られない体験価値を提供することで、他店との差別化を図り顧客の心を掴むことが重要です。

消費者行動から見る店頭販促の可能性

衝動買いが購買の7割を占める現実

消費者の購買行動では、衝動買いの割合が依然高いことが知られています。ある調査では来店客のうち約70~80%が非計画購買で、約76%が店内のPOP広告を目にしており、POP効果で購入した人は25%に達します。

また、実際の来店客の約3割は購入商品を事前に決めずに来店しており、残りは店頭で最終的に商品を選ぶ傾向にあるため、売り場での情報提供や訴求が購買を左右します。この「最後の一押し」としての効果は、計画的な購買だけでなく、衝動買いを促す点でも注目されています。

Web/SNSと店頭の役割分担

一方で、情報取得行動も変化しており、事前情報収集ではWeb/SNSの影響力が拡大しています。2017年の調査と比較して、商品の初期認知・情報収集・購入決定に対する「Web/SNS」の影響力は拡大しており、マスメディアやDM、店舗が顧客接点となっている割合は全体的に下がっていました。

Adobe調査では55.3%が「店舗で実際に商品を見ながら買い物したい」と回答する一方、24.8%は「オンラインで完結させたい」と答えており、両チャネルを併用するOMO型行動が主流化しています。

価格以外の判断基準の重要性

消費者は店舗での迷いや選択困難も感じています。価格以外の判断基準としては、商品の品質・ブランドへの信頼・サステナビリティ(環境配慮)などが重視される傾向があります。

例えばオーガニック製品や地産品、エコ商品は支持層が増えています。加えて、商品数が多く種類選びに迷うと「決められない」不満に繋がるため、カテゴリーごとの代表商品やスタッフおすすめポップで案内する工夫が求められます。

中小小売店が直面する課題と売場改善の必要性

変化する経営環境への対応

中小小売店はECや大手店舗との競争、少子高齢化による顧客層の変化、人手不足・物価高騰など多くの課題に直面しています。経営環境が変化する中で、店内の陳列やPOPを何年も変えないと「店舗に飽きられて客足が遠のく」危険があり、定期的な見直しが欠かせません。

年月を経るにつれて、店舗の周囲の環境が変わり商圏や来店客の特性も変化してその変化に取り残されてしまう可能性もあります。そのようなことにならないために、定期的に店内の見直しを行っていくことが大変重要です。

ターゲット明確化と顧客視点の売場づくり

店内を見直すにあたっては自店のターゲット層を設定し、そのターゲットとなる人々が入りたくなる店作り、買いたくなる品揃えを行っていくことが売上向上に効果的です。

適切な売場づくりにより「入りたくなる店」「買いたくなる品揃え」を実現すれば客単価・リピートの向上につながります。すなわち、単に商品を仕入れるだけでなく、売場のレイアウトや陳列方法を戦略的に整えることが、売上向上には不可欠です。

実店舗ならではの差別化戦略

3つの差別化の柱

競争が激しい小売業界では、商品の品揃え・サービス・顧客体験の3軸で差別化する必要があります。この戦略を成功させるためには、自社の強みを生かしながら、顧客の期待を超える独自の提案を行うことが鍵となります。

商品による差別化

具体的には、PBや地域特産品、エコ・オーガニック商品など他社で真似しにくい独自商品を揃えることが有効です。これらの商品は、価格競争に巻き込まれにくく、ブランド価値の向上に貢献します。

サービスと顧客体験による差別化

スタッフの専門知識やサービス品質を高めることで利便性を訴求します。さらに実店舗ならではの「体験価値」を高めることが鍵です。

店舗レイアウトや照明、香り、音楽による演出で世界観を伝え、オンラインでは得られない手触りや試用体験を提供すれば、消費者に強い動機付けを与えられます。店舗での体験がオンラインストアでは得られないものであれば、消費者にとって一層強い動機づけとなります。

デジタル技術を活用したオンラインサービスや、個別に対応するパーソナライゼーションサービスが競争力を高めています。買い物を単なる商品の購入ではなく、体験として楽しんでもらうことに焦点を当てることで、分かりやすく整理された店舗レイアウト、店内でのインタラクティブなディスプレイ、音楽や香りによる雰囲気作りが顧客体験を豊かにします。

陳列と動線設計の実践テクニック

ゴールデンゾーンの戦略的活用

顧客の視界に入りやすい「ゴールデンゾーン」(身長約160~170cmの目線高さ、床から約75~135cm)には、新商品や売れ筋・高付加価値商品を配置します。これにより注目度が上がり、ついで買いを促します。

クロスマーチャンダイジング(関連商品陳列)

バス用品と洗剤、キッチン用品と保存容器といった関連性の高い商品を近接配置し、ワンストップで買える体験を提供します。バスケット分析によって「売れている組み合わせ」を正確に把握し、関連商品の近接陳列を徹底することで、施策の確度が高まります。

陳列の定期的な変更や、AIを活用した棚割最適化などのデジタル技術も組み合わせることで、経験や勘に頼らない、持続的な店舗成長を実現できる可能性があります。

動線・導線設計の工夫

通路の角や入り口付近、エンド(通路突き当り)など、顧客が立ち止まりやすい場所には季節品・特売品を置いて目を引きます。カート通路を確保しつつ回遊しやすいレイアウトを設計し、ストレスなく店内を巡ってもらうことで接触商品点数を増やします。

陳列量と見せ方のテクニック

山積み陳列でお買い得感を演出したり(量感陳列)、商品を前に出して豊富な在庫感を与える「前進立体陳列」やエンド陳列で視線を引き止める方法を取り入れましょう。

棚の手前(顧客から見える面)に商品を高く配置し、棚全体に商品が豊富に揃っている印象を与える陳列方法で、品揃えの豊富さや在庫切れしない安心感を顧客にアピールできます。

重い商品は下段に置くなど、顧客目線の利便性配慮も重要です。シャンプーや洗剤といった重いかさばる商品は、カートに入れやすいよう下段に陳列するなど、顧客の利便性を考慮した配置も、ストレスなく購買を促すために重要です。

効果的なPOP活用で購買を後押し

店頭販促物の3つの目的

実店舗ではPOP・ポスター・什器ディスプレイなどの店頭販促物が顧客に直接訴求できる強力なツールです。店頭販促物の目的は「注意喚起」「情報提供」「行動喚起」の三つに大別され、通行者の視線を奪い、商品の特徴やキャンペーン内容を伝え、購入への後押しをします。

POPの効果を最大化する要素

有効なPOPには大きく読みやすいキャッチコピーや色彩コントラストを使い、アイキャッチ(「今だけ」「限定」など)を活用して注目度を高めます。価格比較やバンドル訴求でお得感を出すのも効果的です。

遠くからでも目立つPOP配置で「最後の一押し」を狙いましょう。オンライン広告と違い、店頭販促物はその場で商品を手に取れるという最大の特長があります。顧客が実際に商品と接触するリアルな空間だからこそ、視覚・触覚・感情に訴える仕掛けが効果を発揮します。

また、店舗のブランディングや世界観を伝える役割もあり、ブランドイメージを形成する重要な要素としても機能します。

季節性・行事を活かした販促企画

新生活期(3~4月)の戦略

転居・入学・就職に伴う買い替え需要が増えるため、新生活応援フェアや引越し需要対応のクロスプロモーション(例:ドラッグストアで家具店クーポン配布など他業種連携)が有効です。

日用品や家具調理家電の割引セールを行うホームセンター等と連携したクロスプロモーションも検討できます。

年末年始に向けた販促施策

大掃除や正月準備向け商品の需要が高まり、特に物価上昇期には「値上げ前のまとめ買い」を促す戦略が奏功する可能性があります。

12月後半はお節・年越しそば・餅など伝統的な年越し商材に加え、「酒類・洗剤など保存可能な商品を年末特価で販売し、今買うメリット」を訴求すると効果的です。

伝統的なお節・年越しそば・年明け餅販売に加え、「来年から値上げ予定の商品は今のうちに!」と駆け込み需要を促します。特にさらなる物価上昇が見込まれる場合、年末のうちにまとめ買いするメリットを打ち出します。

具体的には保存が効く酒類や洗剤などを年末限定の安値で提供し、「今買うとお得」と訴求します。スマホアプリ利用者限定の豪華福引を実施するといったお祭り感を演出し、一年の締めくくりにふさわしい活気を生み出すことも考えられます。

クリスマス商戦の工夫

クリスマス商戦では、一人暮らし層向けの小型ケーキや二人用セットを増やすなど、少人数ニーズにも対応することで売上を伸ばせる可能性があります。

バイヤーと問屋・卸の連携強化

バイヤーに求められる視点

小売店舗のバイヤー(仕入担当者)は、仕入れ先を選ぶだけでなく「仕入れた先に売れる売り場をつくる」視点を持つことが肝要です。

販売戦略から逆算した仕入れを行い、どの商品を強調するか、どのように売るかを考え、販促企画にも参画します。単価だけでなく売れる理由(機能・用途・季節性など)を重視し、例えば年末前なら洗剤や缶詰のまとめ買い提案などシーズン性を踏まえた仕入れを行います。

メーカー・問屋と協力し、売場用POPやサンプル配布、店頭試用会などプロモーション施策を計画します。仕入れた商品をより魅力的に見せるキャッチコピー作成やパッケージ訴求ポイントの共有なども検討します。

問屋・卸による支援策

問屋や卸売業者は中小小売店を支援する役割も担います。

季節やテーマ別のPOP・ポスター・棚札のテンプレートや印刷物を無償提供し、店頭装飾をサポートします。また、デジタル用素材(SNS投稿画像など)を共有してオムニチャネル販促を支援することも有効です。

複数メーカー商品を組み合わせたタイアップ企画(お試しセットやまとめ買い割引など)やポイントアップデー、スタンプラリーなど集客施策を提案し、販促費やノウハウを提供します。

売場づくりや接客研修、最新商品説明会など、店舗スタッフ向けのノウハウ提供会を主催し、販売スキルの向上を図ります。

地域特化型・店舗限定のPB開発や、季節イベントに合わせた限定商品企画を共同で行います。問屋の調査データやトレンド情報を活用し、中小店の独自性を打ち出す商品提案を行うことで、差別化を支援します。

まとめ:戦略的な店頭販促と売場づくりで競争優位を築く

デジタル時代においても、実店舗での購買体験は依然として重要な役割を果たしています。消費者の約7割が非計画購買を行い、店内POPを見た人の25%が購入に至るという事実は、店頭販促の影響力の大きさを示しています。

中小小売店が競争に勝ち残るためには、ゴールデンゾーン活用やクロスMD、動線設計といった陳列テクニックに加え、効果的なPOP展開、季節性を活かした販促企画が不可欠です。さらに、商品・サービス・顧客体験の3軸で差別化を図り、オンラインでは得られない体験価値を提供することが重要です。

バイヤーは販売戦略から逆算した仕入れと販促連携を意識し、問屋・卸は販促ツール提供や共同企画でサポートすることで、中小店の独自性を打ち出すことができます。

定期的な売場見直しと顧客視点に立った改善を継続することで、「入りたくなる店」「買いたくなる品揃え」を実現し、持続的な店舗成長につなげることが可能になるでしょう。

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